吉野弘の『夕焼け』を、心を込めてレビュー致します。
この詩に出会ったのは、たしか
詩とまだ分かち合えず、世間をふらふらと
悲しみでさ迷っていた頃のことだった。
僕は詩に興味があったわけでもない。
なんとなく詩を読んだ。
そして、涙は出なかったが、
心の奥にストンと落ちたものがあった。
僕はその当時、いじめられていた。
あるいは、いじめられているのか皆目
分からなかったが、僕がクラスから
退けられているのは分かった。
そんなときに目にした『夕焼け』(だったと思う)。
やさしい人を根本的に救うかのような
肯定してくれるかのような、やさしいさざめきに満ちた
そんな詩だった。
電車での出来事で、ある娘のやさしさの葛藤を描いている。
これは、実際にあった出来事だと思うが、
この娘が、のちに幾千もの人を勇気づけることになるとは、
夢にも思っていないだろう。
それを詩人の吉野さんは、やさしくすくい取ったのだ。
この最後の夕焼けの配置。
これには、色々な解釈ができるかもしれない。
たとえ哀しみに暮れていても、あの夕焼けは決して
そのようには見えないというような。
あるいは、娘がかなしい想いをしている中でも、
夕焼けはだまって見つめてくれているというような。
はたまたそれ以上の、何か大切なものを指し示してくれる。
吉野さんの詩は、とても懐かしく、台所にあるお盆のような
ものを想像させてくれる。変なたとえだが。
この『夕焼け』という詩以外にも、優れたユニークな詩は
たくさんあるので、ぜひ参考になさってみてください。
読みやすく、時を経るごとに、ハートの波を鎮ませてくれる
微笑みが自然と漏れるやさしい詩がいっぱいありますので。
かめれもん★より