詩『人生に絶望して』

スカイダイビングで
ヘリコプターから
真っ逆さまに
落ちてみたはいいけれど

どこまで落ちていくの?

果てしなく
逆行する
風は強く
私はパラシュートを付けていなかった

だから終わったのだ
私の人生は

もともと人生に絶望して
飛び降りてみたものの
あと何回絶望を想起すれば
逆に希望になって
地に華は咲くのか

広大な土地に町が広がっている

夕陽はきらきらと遠くで
私よりも長い
永遠と虚無を歌っている

ちょうど川が流れている辺りに
運よく飛び込めそうだ
その前に
私はショックで
気絶してしまうかもしれないが

30秒前

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嗚呼!!!

私はお花畑でふと
目を静かに見開く

上半身を起こし
周囲を見渡す

夢だったのか
それともここが
天国なのか分からない

1つ分かることは
私はまだ生きていて
人間だったということ

その思い出が
セレブレーションのように
そよ風が吹き

私の経験は
永遠の真珠となった

詩『跳び箱社会』

跳び箱

10段

跳べない

僕は

罪人

なんで

しょうか?

それが今日の
僕の疑問です

体育の授業で
跳び箱10段

跳ぶのがあたりまえの
学校生活だったらしい

僕は跳び箱の前で
萎縮してしまった

先生も生徒も
変な目で僕を見ている

としても
僕はこの跳び箱10段
普通に跳べることが
正解なんですか?

先生が僕に
近づいて来る

のっしのっしと

僕は冷や汗で
震えながら
「うおう!」
とベッドを跳び起きた

「なんだ、夢か」

今日は体育の授業で
跳び箱3段跳ぶ
確認テストがある

僕はなんだか大らかな気持ちになって
朝食を食べて
玄関のドアを開け
「いってきます!」

と登校し始めた

電線に停まっていた
雀の群れが一斉に
空へと飛び立っていった

詩『蜂蜜を届けに』

蜂蜜を誰かにあげたくて
それを手渡しに行く
しっかりと布でくるんで
春の風吹き渡るやさしい日差しの中
走って手渡しに行く

蜂蜜を手渡しに行く相手は
誰か言えない
言うと
人間じゃないから と
人間が言うから

だから私は黙って
家を出てきました
家の中は今静かです
母と父は私を見兼ねて困った様子です
それでも私は構いません

あの人に
あの方へ
人間と同等の価値を有する
大事な私の友達に
蜂蜜を手渡しに行くのです

タクシーなんかは要りません
バスなどもってのほか
私は風になって
空を飛べるから
そんなものは要らないのです

あの方にはその方が
ふさわしく
喜んでくれるでしょうから
私はこの白いワンピースを
はためかせながら
海が見える高原へと
やってきたのです

来ましたよ
あなた
あなたが好きな
この蜂蜜
食べてくれるかしら

雲は少し揺れ動き
そこから数多の
光 降り 落ち
私は本当の風になって
いなくなったのです

崖の先端には
黄金色に光る
ぴかぴかの透明な蜂蜜が
風に揺れて今にも落ちそうで
消えてしまいそうな
晴れ渡った昼の午後でした

私は未来に飛び込みました
飛沫で粉々になったような
春を空に描き
どこか遠くでクレパスの芯が折れ
子どもたちの泣き声が
ここから霞んで見えました

詩『忘れられた人』

雨の中ずぶぬれている男がいた
コートはもうびしょぬれで
足取りは重く
元気はなさそうに見えた
初老の男性で少し無精ひげを生やしている

さっきスパゲティを食べてきたばかりさ
まだ残り香がするだろう

ポケットの中から
うさぎを二羽
しゅぽしゅぽっと取り出し
その男は呟く

こいつらも火傷を負っている
見ろ
全身傷だらけでお互いにその傷を
舐め合っているだろう
なあ
お前と俺たちと
どう違う?

え?

夢のクレーン車から
バラバラに解体された僕の鉄骨が
ドスンドスドスと
ベッドの上に
横たわり
浅い息を小刻みにして
震えていた

まだ寒いのに
背中に汗をかき
リアルな僕が携帯越しに
ゆらめいていた

朝のカーテンから
光のレーザービームが
チラチラチラチラと
繊細な糸を
網目のように
放ちまくり
脳の神経細胞と
酷似していた

朝になれば誰もいなくなる
この寝室からはいつも
夢だけが置き去りにされて
透明人間だけが
目だけ凝らして
立ち尽くしている